舞台「ゲルニカ」

内容も結構おもしろかったんだけど、久しぶりに舞台を見て、舞台が上演されていてそれを見られるというところに感動してしまった。

ストーリー

やりたいことがはっきりわかってる脚本だなって感じだった。

だからこそ、ちょいちょいそこもうちょっと描写ほしい……!みたいなところもあったんだけど、テンポと尺のために削られたんだろうなというところで飲み込める範疇ではあった。でもやっぱりサラの自分が支配者層であったことに対する自省とか難民ヘイトへのフォローとかもうちょいほしかったな~~~~~~個人的な好みではあるけど……あとイグナシオが銃拾うところ急すぎん?などとも思った……

でもそれでも十分落ちへの盛り上がりはあって、そこへ向かっていく流れと落ちは好きだった。生き残るべき人間が生き残って、ご都合主義的に生き残る人間がいなかったところとか、あと全体的な主張についても。個人的に、暴力を題材にしてるのに下手な人間生き残らせると暴力の凄惨さが薄れると思ってるんだけど、外部の人間である記者たちだけが生き残るということで、その凄惨さを恐れながらも感情的になりすぎず語り継ぐ必要があるっていう主張になってて、感情と理性の両方に訴えかけるバランスがよかった。

あと全体的な倫理観が現代仕様にアップデートされつつうまく溶け込んでて、そこもものすごくよかった。これはレイチェルの描き方に顕著で、当時女性記者はマジョリティーではなかっただろうから、そこを意識した上で登場させてると思うんだけど、この男性社会に交じって働く人間を登場させることで、作品全体を通して女性性が過剰に演出されていないというか。サラとかマリアとかは割と男←→女という対立軸で描かれるシーンが多かった印象なんだけど、そこにレイチェルのシーンが入ることで女性のステレオタイプを助長させないようになっているというか。あと、レイチェルの存在によって、先述した主張に加えて女性が働くことについてのジェンダー的主張もするっていう。3時間弱で語るだけ語っててすごいな。

それから激個人的な好みとして、マリアのキャラクターがすごく好きだった。そもそも勝手な女が好きで、まああの勝手さは男性優位社会で押しつぶされながら磨き上げられた処世術もあってのことだと思うんだけど(小池百合子的な…)、その勝手さの中に彼女なりの論理と気位と感情とがあって、爆撃を命令するシーンでは不謹慎ながらめちゃ興奮した。こういう女性をもっと見たい!!!!!!暴力は絶対ダメですけど!!!!!!(当たり前)

演出・舞台美術

全体的にシンプルで、それが物語の雰囲気を引き立てていたと思う。

舞台美術に関して、具象のセットについても作りこむというよりはシチュエーションがわかるという程度のものだったけど、どのシーンをとっても景が美しかった。

十字架のシーンとかかっこよすぎでものすごく心つかまれた。必要なものを極限まで削ったシンプルさが、あの場面での緊迫感とマッチしてより雰囲気を高めてくれていたと思う。いや~~~今思い返してもしみじみかっこいい……

あとイシドロの食堂もおしゃれだったな~~~個人的にすごく好き。牧歌的な雰囲気もあるんだけど、そのせいでここに血だらけのアントニオが出てくる時にはものすごい非日常感と、もう状況が変わってしまったんだなという絶望感があった。

演出について、たまにそこくどくない?(テオ引き留めるシーンとか)とかその演技でいいんか(イグナシオ心象風景でのでんぐり返しとか)とか思うところもあったけど、メリハリがしっかりしてて盛り上がるべきところで盛り上げてくるなーという感じだった。

基本的には会話か一人語りなんだけど、要所要所でいわゆる演劇的な大人数で声をそろえてセリフを言うシーンが入ることで、こちらに対する圧をかけてくるというか、「これからやべーことが起きるぞ…」というドキドキと不安感が高まった。最後とかね、大人数の声でさんざん盛り上げといていきなり静かになって唐突な死が訪れるっていうの、余韻がすごかった。

あとずっとイスが2脚あったけど、あれはどういう意図だったんだろう。2脚あったし、序盤で死んでしまう2人と、よそからやってくる記者の2人とっていう、ゲルニカの出来事を外側から眺める人達のための席ってことなのかな。記憶があいまいだけど、確かこの4人しかあのイスに座ってなかった気がする。そして、あの席がほとんど使われないにも関わらずずっと舞台上にあったのは、記者たちと同じく外側の人間である観客のための席だからとかそういうことだったりするのかな~~~これはちょっと根拠薄いかな……他の人の考察を読みたい

 

久しぶりに舞台を見て、やっぱり目の前に人がいるっていうパワーはすごかった。

まだやる側も見る側も以前の通りにとはいかないけど、近場のものにはもうちょい足を運ぶようにしたいな~~~