コンテクスト・オブ・ザ・デッド

なんかそんなに面白くなかった。

まず最初の方の直接的な文芸界隈への愚痴みたいなのがどうでもいいなと思った。作者自身の主張じゃなくてあくまで登場人物の主張ですよというレベルを超えて複数人に言わせすぎだしくどい。もっと本を読んでいて文芸の現状を知っている人なら面白いのかなあ。このあたり、メタ的な構造としてはKの「緑色のヤツ」と同じ構造になってると思うんだけど、自虐的にやってるってことなのかな?どちらにせよそうかーという感想しか思い浮かばなかった。

あと女子高生が最初の救世主として目覚めるっていうのも展開としては陳腐だよね。このあたりも自覚的にやってはいるんだろうけど、コンテクスト人間とそれに対する皮肉が何度も何度も繰り返されれてて食傷気味になってしまった。

全体的にくどくて、読めはするんだけどはいはいそうだねっていう域を越えなかったんだけど、最後は好きだったな。Kが己の諸々に対して自覚的になって(なろうとして)ゾンビにならなかったところ、それまでは完全な救世主として描かれていた希が新垣とコンテクストの共有をして若干ゾンビになっているのかもしれない・でも己で考える態度を保ち続けようというところ、桃咲がゾンビになりながらもそれに抵抗する意思を見せつけてそれに選考委員が反応しているところ。それぞれがコンテクストの共有とコミュニティの中での同化から逃れえないんだけど、100%の追従はしないという意思を持ち続けているところが、すごく態度としてまっとうだし、このまっとうさは作者自身の所信表明だとも思う。